『無題』…メフィスト二世×埋れ木真吾
その感情を覚えたのは、ちょうど半年前の事。
調べ物を手伝って、と頼んだところ、ぶつぶつと文句を言いながらも本の山の中に消えて行った君。
それを笑いながら追う自分。
ああ、なんだかんだで彼は良き友人だ、そう思っていた。
それからしばらく後、ふと時計の針を見るときりのいい時間だったので、休憩をしようかと、君を呼ぼうとおもったんだ。
高く積み上げられた書物の森をかき分けながら、君の姿を探した。
そして、見つけた、けど。
いつもの様には、声が出なかった。
視線の先には、珍しく真摯に本を眺める君。
その姿を見た瞬間、僕の体は固まった。
普段見慣れた姿のはずなのに。
何故だかその時、本に耽っているその横顔に、目が釘付けになって。
淡々と文字を追う度に揺れる瞳が、とてもきれいだと思った。
このまま、ずっと眺めていたいと思った。
その後、僕の気配に気付いたのか、彼の方から話しかけてきた。
はっとして、ぎこちなく笑って見せる。
そして、いつも通りの声音を取り戻して、彼に用件を伝えた。
ただ、こころだけが、もう戻れないその感情をたたえていた。
ああ、初めての恋が、よりにもよって彼だなんて。
これが叶わぬ事がなければ、まだ救いがあったのに。
彼は自分以上に僕の事が好きだと言うんだから、もうどうしようもないじゃないか。
しかも彼は、自分を手放す気は毛頭ないらしい。
そんな事言われたら、僕だって彼を裏切る事なんて出来やしない。
神様、貴方は僕に普通の恋愛は一生させない気なんですね。
最初で最後の、恋心。
それは同性、しかも悪魔が相手だけれども。
僕にとっては、どんな恋愛よりも、ずっとずっと素敵なものなんだ。
普通の恋愛は、出来ないかもしれないけど。
どんなに変わった形でも、二人は今とても「シアワセ」。
***
一部改訂。
『あなたへの伝言』…松下一郎
白い空の向こう、ふとあなたを想う事がある。
親愛なるお母様。
あの日が来るまで、慈しみ、可愛がってくださったお母様。
あの日以来、狂い、変わってしまわれたお母様。
悩み、自らを苛まれ続けたお母様。
わたしのせい わたしがこんな子にうんだばっかりに
何度も何度も呟いておりましたね。
しかし、それは間違いです。
貴女は何も悪くない
ただ、神の不始末に巻き込まれただけなのですから。
ですから、ついには僕に手をかけてしまわれたときも、
成功しなかったのは道理なのです。
神が殺し損ねた子供を、人の貴女が殺せるわけが無い。
まして、最期までその子を愛していた貴女には。
いちろうちゃん おかあさんといっしょに いいところへいきましょうね
あの時の、貴女の顔が忘れられない。
僕には分かっていましたよ。
どんなに狂気に溢れていても、貴女が変わらず、僕を愛してくれていた事を。
どんなに形を変えていても、その心根が変わらなかった事を。
お母様。
親愛なる お母様。
一緒にゆくことは 叶いませんでしたが
せめて貴女を想う事位は出来ましょう。
彼方を想う事位は、出来ましょう。
お母様
僕はいつまでも、貴女の 愛する息子 です。
そしてまた、貴女も変わらずに、僕の 愛するお母様 です。
貴女の 彼方での 幸福を
どうか"あなた"に 幸多からん事を
お母様
精一杯の 愛を込めて
一郎
***
彼方は死後の世界ですね。
「あなた」を掛詞として。
一部改訂。
『僕の魂を救っておくれ』…ダニエル・ヒトラー→山田真吾
痛い 痛い 心が痛い
病んだ精神が 僕の全てを蝕んでいく
誰か救いの手を
温もりを
愛を
哀れなこの僕に
君は救世主なんだろう?
ならば目の前の人間一人救うなんて
やって当然のはずだろう?
やれて当然のはずだろう?
ほら、はやく受け止めておくれよ
その大きな愛で
この僕の全てを
君は僕の大きな
世界への罪すら許したじゃないか
ならば今 君へのこれくらいの仕打ち
許してくれて当然さ
まして君は救世主だろう?
全てを許し、全てを救って
それが出来なきゃ偽者さ
君の肉体的苦痛なんて
僕の痛みに比べれば
一時的に苦しいだけの 軽い痛み
それで人一人救えるんだ
やすいものだろう?
まだだ まだこんなもんじゃない
君はまだ僕を受け止めきれていない
僕を救いきれていない
はやくしておくれよ
このままだと僕は
自ら救われる機会を絶ってしまうよ
はやくはやく
僕を救って
僕の魂を救っておくれ
もっともっと
僕を愛して
僕の魂を愛しておくれ
救世主よ
哀れな僕を 哀れまないで
同情ではなく 愛情を
救世主よ
許しを 愛を
救いを
この僕に
この僕の魂に
***
書いているうちに佐藤っぽくなった気がする。
肉体的苦痛の意味は深読みしちゃいけません
モドル。